講談社BOOK倶楽部

講談社BOX:Powers

講談社BOX Everything is Boxed, KODANSHA BOX. OPEN NOW!!

第三回座談会

Powers、2本出る!

第3回Powers最終候補作品

架神恭介『戦闘破壊学園ダンゲロス』

【あらすじ】
この小説はTRPG「戦闘破壊学園ダンゲロス」のノベライズ作品です。「ダンゲロス」では、プレイヤーは『魔人』と呼ばれる異能力者を一人一キャラクター作成し、他のプレイヤーたちとチームを組んで、「生徒会」「番長グループ」の二派に分かれて戦います。

C:編集部が選考する賞って今いろいろあるじゃない。なんか飽きてこない? BOXはちょっとよそと違うことがやってみたくってゲストを迎えました。少年漫画『月刊少年シリウス』編集部のF井さん。漫画編集者の視点から応募作品を見てもらえれば、と。で、ゆくゆく漫画化できたりすればいいなあ、ってことです。

一同:よろしくお願いします。

C:いきなり問題作だよね。なにしろ宇宙で一番の「ビッチ」が活躍するとか、しないとか。では早速話しましょうか。架神恭介さんの『戦闘破壊学園ダンゲロス』。

も:出自がちょっと異色な作品です。原稿の冒頭に「この小説はTRPG(テーブルトークロールプレイングゲーム)『戦闘破壊学園ダンゲロス』のノベライズ作品です」と書いてありますが、この作者は実際にネットで『戦闘破壊学園ダンゲロス』というゲームを作り、参加者を募って何度かゲームを行っていたみたいですね。で、参加者には自分オリジナルの特殊能力をもった「キャラクター」を作ってもらって、要は学園内でそのキャラ同士で闘い合うんです。

C:早速よくわからないんだけど。

お柴:実際にゲームがあるんですか?

も:検索したらありました。参加者(=キャラクター)は学園内において「生徒会側」と「番長側」に分かれて、陣地のマス目をとりあいながら戦っていくんですね。参加者同士でチャットかなにかでリアルタイムに作戦を立てながら闘い合う……チームワークと頭脳プレイが要求されるゲームみたいです。

北:ってことは、賞をあげたとしても書籍化できるかどうかわからないってこと?

も:キャラ全てがこの人自身の生み出したものなのか、この原稿からだとわからないんですよね。他の参加者が考えたキャラをこの人が小説で使っているなら、Powersの規定の出版確約は現状ではできないと思います。

N崎:キャラだけじゃなくて、舞台とか設定も含めてそうだよね……?

も:舞台はこの人が全て考えているみたいです。

N崎:この人が作ったゲームならいいんだけど。

も:著作権まわりはおいといて作品としてはどうですかね? 私はハッタリのきいた能力設定&キャラ立ちは買いたいです。

北:私はこの作品、かなり面白いと思いました。

C:お柴さんどうでした?

お柴:面白かったですよ。『ジョジョの奇妙な冒険』×『バトル・ロワイアル』みたいな感じで。

北:私は『男塾(『魁!!男塾』)』×『北斗の拳』×山風(山田風太郎)とか思った(笑)。

お柴:エロが山風ですね。

C:ただ山田風太郎的世界っていろんなことが無惨なんだよね。『戦闘破壊学園ダンゲロス』は虫けらのように人が死んでいくんだけど、割り合いあっさりしてるように感じた。無惨とは違うあっけなさっていうか。

北:出版上このエロ部分はまずかったりしますかね?

C:このくらいをエロとは言わんでしょ。「くノ一」みたいなものを期待するとちょっと違うからね。

Ts:僕はこの架神恭介さんの文章はなんと言うか、ト書きみたいで文章そのものの面白味というのはあまり感じられなかったんですね。一番最初の2人の魔人の対決シーンでは「これ、人物を替えても同じ喋くりじゃない」って思えて、今「キャラクターが立ってる」って言われているけれども、そういう印象はあまりなかったんだよね。だから、ある種、荒唐無稽な設定を楽しませるだけの文章の面白味というのが足りないなという感じでした。だから僕は手放しでPowersには推せないですね。

北:私は逆に、ト書きみたいな文章だったから面白かったんですよね。文章で読ませたり文章に味わいまで入れちゃうと、逆にぐちゃぐちゃになってしまうんじゃないかと思ったんですよ。キャラクターの設定に特化している小説であると思うので、この作品に関しては、私はあまり「ト書きっぽいから悪い」ということは感じなかったです。

C:世界観の問題なのかなあ。山田風太郎さんには「人間なんてそんなもの」的な世界観があるじゃない。だから女性にも子供にも容赦ない。冒頭いきなり殺されたりする。この小説にはそういう著者のバックグラウンドみたいな世界観をあまり感じない。まあそれが今っぽいと言えば今っぽいのかもしれないんだけどね。

北:う〜ん……私はむしろ、その全く感情移入できないところが面白かったのですが……。

C:ただ、『バトル・ロワイアル』がなぜあんなふうに拒絶反応を起させたのかっていうと、人の神経を逆なでする乱暴さがあったからだと思うんだよね。そういうムチャな部分がもっとあったほうがいいと思うんだよなあ。どうせなら皆が「ゲーッ」って言ってくれて注目を集めたほうが楽しくない?

北:若い人の意見はどうですか?

お柴:戦いが中心となるゲームパートと、ゲーム後のパートとに分かれていますよね。第一印象では、ゲームパートがあっけなかったなと思いました。キャラクターが登場→トラウマエピソードなどで補足→闘い、というパターンでキャラクターが次々に現れては消えていって、物足りないと思ったんです。

北:魔人同士が闘うという設定において、1対1の魔人で闘う場合どちらが有利でどちらが不利というのがそれぞれの魔人の能力に応じて条件があるじゃないですか。乱暴に作っているようでいて、実は上手い組み合わせで作られているなと思いました。そりゃあ、血眼で読めば粗とかもたくさん出てくると思うんですけど。

C:最後までいくと、×××して……というところでは「おおっ!」と思ったよ。でもこれ1作では判断できないなあ〜!

北:まあ確かに「他にどんなのが書けるのだろう?」っていうのはもちろんありますけど、でもすごく面白かったんですよね。私はPowersにしたいくらいですね。

C:僕は判断に迷うな〜気持ちが入っていかないからかなぁ。

北:感情移入しにくいとか血肉がないっていうことは、逆に確信犯でやってるんじゃないかって思うんです。あまり共感とかを求めてないっていうか。

C:昔、新本格ミステリの評価をする時に「人間が書けているかいないか」っていう議論があったじゃない? もちろん「そんなのはどうでもいいじゃん!」とは思うんだけど、それとは違うレベルの話なんだよなあ〜。なんか物足りない感じ。新本格みたいに、美しい謎とロジックの世界観があった上で人間たちが記号なのであればいいんだけど、『ダンゲロス』これに関してはなかなか見つけづらかったんだよなあ〜。大げさに言えば「美学」とか「哲学」とか。

北:でも新本格の枠組みだけで考えるのって、どうなんですかね? BOXに関しては。

C:いや、新本格はあくまでも一例だよ。人間が記号であるかどうかっていう話で言うと、新本格の世界があった上で人間が記号であるならいいんだけど、この作品においては人間が記号でいいとするならば、それを補完できるほどの世界観があるのかな? っていう。山田風太郎にはあるじゃない? 結局、この人はどういう人でどういう世界観をもって作品を書いているのかっていうのが俺にはわからないから、この1作ではやっぱりPowersには推しきれない。

北:私はPowers始まってから一番面白かったです。って私だけ笑いのツボが違うのかな……?(笑)

Ts:いや、結構面白いんだよ? 笑いで言うと、例えばキャラクターの名前とかも全部笑えるわけじゃない?

も:必殺技の名称も全部チープですよね。性転換能力者の能力発動時の掛け声が「チンポイ!」とか。

Ts:そういうギャグ方向で打ち出していって、Powersっていうのもありだね。っていうか、全部ギャグだと思うよ(笑)。

も:笑いのセンスはある人だと思います。

C:でも、全部ギャグで原稿用紙1000枚ねえ〜。ギャグならもう少しシンプルにいきたいなあ。シリウス的にはどう?

F井:いっぱい笑ったしすごく面白かったですよ。でも僕は“自分がこの世界にいたら”ということを考えながら読むのですが、そうするとこの小説のキャラクターは1人たりとも「いてほしい奴」じゃないんですよ(笑)。そこがちょっと辛かったですね。ただ、話はテンポも良かったし、能力バトルも『HUNTER×HUNTER』とかに比べても全然上をいっているなと思ったので、たぶん話は作れる人なんだろうなと思いました。だからそういう意味では、機会があれば一緒にお仕事をしてみたい人ではありますね。あと、小説におけるキャラクターというのがどういうものなのかというのが、漫画の編集者でも考え方が違うと思うんですけど、でもキャラクターというのは基本的には“いてほしい人”だと思っているので、そういう観点から言うと、キャラクターはあまり成立していないような気がして、全部エログロに終始してしまうので、どうしても閉じてしまうんですよね(笑)。それがもったいないなあと思いながら読みました。でも漫画よりも小説のほうがその読者の許容範囲は広いと思っています。山田風太郎さんの小説の漫画化って結構多いですけど、やはり超ヒットするものが出てないのは、どこか厭世的というか死にたがりというか、そういう世界観を漫画で読むとちょっと辛いからなんですよね。ただ、作品としては僕は面白く読ませていただきましたよ。

C:一度本人に会って、著作権的な部分をはっきりさせてから賞をどうするか決めてもいい?

Ts:女子2名はPowers?

北&も:うん。Powers。

C:前回はオッサンの強力なプッシュでパワーズを出しましたが、今回は女子の推しが強いですね(笑)。では、ご本人に会ってから決めましょうか。

この枚数はもう限界かもしれない

北:八田モンキーさんの『どらごんのーと』。これはStonesかな。

C:これでPowersとは思わないけれど、才能あると思うよ。

お柴:世界観とか文章の印象が叙情的でしたね。とある大学教授が死んで、「彼を殺したのは娘の4姉妹のうち誰だ!?」という話ですね。主人公が巻き込まれながら事件を解決していきます。残念だったのは、登場人物をうまく使いこなせていなかったところでしょうか。

北:河原でフルート吹いてる情景とかが凄く良かった。あと、文章で時々すごく良い一文とかがあって。主人公がネットカフェでブログの画面を見ていたくだりで、“秒速○メガバイトの息づかいが聞こえてくるようだ”とか、すごくハッとさせられましたね。作者評価だけならもっと上だと思います。作品評価はStonesだけど、作者評価はTalents! 次作に期待大です。

C:どこの人だっけ、京都? ちょっと会ってこようかな。来週京都行く用事があるから。あと他に中締めで残ってたのは……紅蓮櫻さんの『黒式セーラー』ね。岡山の16歳。

Ts:この人は「書生」シリーズを自分で立ち上げて毎回応募してくれてるんですよ。書生さんのシリーズは矢Gさんも読んでいて、好感のもてる作品だと思うのだけれど、応募ごとにうまくなっていて、今回の『黒式セーラー』も面白く読めました。登場人物2人のキャラクターの魅力がちゃんとできていて、この2人を主軸にシリーズ展開ができそう。そういう意味で漫画にもっていけるのかもしれない。あと平易な文章で状況を説明できるし、きれいで、ちょっとノスタルジックな作品世界もいいです。語句の使い方にやや難ありで、もっと勉強してほしいけど、才能はあるんじゃないかな。まだ若いんで、焦らずにじっくり書いてPowers狙ってほしいですね。

C:なんだか肩に力の入った感じがすごく微笑ましいんだよね。こんなふうに言うと本人は嫌がるかもしれないけれど。本作も完全に乱歩の世界。むごたらしい死体の演出とかハッタリがきいているよね。16歳という若さも買って、Talentsでいいんじゃない? それにしても原稿用紙1000枚以上の大作がいっぱい来ますね。持ち運ぶだけでタイヘン。40肩にはツラいよ……。

お柴:みんな長い作品大好きですね(笑)。

C:長さが自由なのは応募する上での魅力なのかも知れないけれど、「本当にこの分量が必要か?」ってことは考えてほしいよね。 以前も言ったけど、1000枚ってことは映画に置き換えると上映時間3時間以上ってことだからね。そういうタルコフスキーみたいな作品って現代ではなかなか成立するのが難しいと思うよ。
あ〜それにしても小説の読み方って人それぞれだよね。違う視点が入るのってやっぱり面白い。漫画も小説も創作だもんね。シリウスのF井さんには今回の応募作をいくつか持ち帰ってご検討いただくということで……。第3回はこんなところだね。また次回お会いしましょう。

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