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第八回座談会

さよならC部長第八回座談会

※流水大賞の全七回を抜き、Powersも第八回目となりましたが今回でC部長が小説現代に異動になりました(ナレーション)。

C:(何事もなかったかのように)今回も応募数は多かったよね!

も:早速みていきましょうか。揚野蛙手さんの、『O(オー)の神様』。矢Gさん推薦ということでしたが、ストーリーの説明をお願いします。

矢G:狼を信仰する母方の実家に身を寄せることになった主人公の高校生男子が、ひょんなことから不思議な力を持った狼と契約を結びます。同時にその地方では、絶滅した狼を増やして生態系を再生させようという環境保護プロジェクトが進行中で、その推進派の研究者の娘がヒロインです。立場の違う二人の淡い恋心に、狼プロジェクトの利権をめぐる大人の思惑、山の獣神達による妨害などが絡んできて……という結構複雑な構造をもった小説です。

C:この人、人生で一番影響を受けた小説に京極夏彦さんの『魍魎の匣』を上げているけど、そんな雰囲気があったようななかったような……やっぱり、なかったかな。

矢G:ライトノベル的なストーリー展開をベースに、「もう一度狼を自然に戻そう!」というリアル要素を入れてお話を進めようとしているところが新しくて読みどころかな、と思いました。途中から狼が主人公の使い魔みたいになるのもかっこいいんです。ただ、フィクションとしての狼の扱い方は非常に上手いんですけど、「狼が日本の生態系を維持するために必要だ」という主張をはじめ、狼に関するリアルの部分をノンフィクションのようにして頑張って書きすぎたせいで、小説としての面白さを損ねた感がありますね。

C:序盤、バスに乗ったら他の乗客が人外の者で、なんて場面は面白かったのにねえ。あれだけダメだって言われてるのに行くからだよ! なんて結構ハラハラもした。狼やっぱり怖いです。

矢G:学校に来なくなったヒロインにプリントを渡すために、うら寂しいバスに乗って山道をゆくシーンですね。あそこは凄く面白かったですよね!

慎GO:この方、巻末で参考文献を12冊くらい挙げてくれているんですけど途中から知識のひけらかしになってしまっているところがありますよね。

矢G:そうなんです。そしてその知識が、多くの人の日常生活に何ら影響を及ぼさないものなんですよね。

C:主人公自身もあまり揺らがないよね。ヘンなことがガンガン起こっているのに割合平気なんだよ。そこがやはりエンターテインメントとして弱いのかな。「おっ」と思ったのは、雷がピカピカ光ってバスの乗客の顔が白く浮かび上がると、彼らが人間じゃないっていうのがわかる場面。「お約束」かもしれないけど、グラグラきたよ。でもそのあとは、とある田舎の物語として読めちゃうのが残念。

矢G:そうですね。前半の面白さで“後半も何かあるのかな”と期待させられるんですけど、その期待を超えてくれないというか。

Nori:狼が出てきてからは古代の動物との交流が描かれるのかなと思ったんですけど、そういった描写もほとんど無いですよね。

C:狼が文字通りの意味で「研究対象」にとどまっているんだよね! せっかく面白いモチーフなのにそれが冷静に研究されると損だと思うなあ。もっと作者自身がこの物語に狂ってくれないと。文章は安定しているけど、その分スリリングさがない……。

も:主人公がこんなに気にかけている狼たちに逆に襲われる場面とかあればいいのに。

矢G:もっと強い狼が出てくるとか!

C:動物モノだったらやっぱり「体を張って主人を守る」っていう物語かしら。

矢G:あとは動物が美少女に変身して転校してくるってやつですね(笑)。

C:それがあった! とすると最強なのは両方が合体したパターン。動物に化けた美少女が転校してきてご主人様を体を張って守る……。賞はどうしようか?

矢G:Stonesにして、私が電話をして再投稿を呼びかけてみます。「この作品は面白いのですがリアルに偏りすぎてしまっているのでもう1回チャレンジしてみませんか?」という形で。

も:では次は、高橋渉水さんの『インモラルインテレクト』。“冷蔵庫にあったはずのケーキがない!”とか“部室で人が消えた!”といった、日常のささやかな謎のお話でしたね。推理研究会、略して推研に幼なじみと女の子と探偵役の男の子が入って毎章ちょっとずつ不思議を解決していくというお話です。キャラも可愛いし、毎回ちょっとした謎ときに「おおっ!」と楽しまされるんですけど、こういった「日常の謎」モノで果たして今デビューしてよいものかどうか……。他社さんで超売れてますけどね!

C:まず一般論で言うと、“デビューするにはまずは長編の方が良い”ということだね。短編では収まらないくらい「謎」は大きいほうがいいものね。連作短編でももちろんいいけど、そうなるとベストなのは各事件を解決することによって、その背後にあるより大きな謎に迫っていく、という形。でも長編より難しいんじゃないかなあ。この作品の場合、著者が“このトリックで長編はもたない”って現実的に判断したから短編になったんだと思う。

も:一回会って、短編ミステリ以外を書けそうか話してみますよ。Stonesでいいですか?

C:Stonesでいきましょう! 凄く可愛いほんわかしたミステリーだったね! だから印象は確かにいい。でも「純真だと思っていた奴が実は邪悪だった」とかいう展開があってもいいのでは、と思ってしまいました。昔の小説とかだと割合あるのが「心の清らかな娼婦」。人間、そう単純ではないってことですね。次は『喪服探偵aiko. 』。なんかタイトルからして、当てにいっている感じがするけど。どうでした?

Nori:ある女性が探偵業を始めるんですが、喪服しか着ないんです。そして部屋の中では何故か素っ裸でいるという。副業が「小説新人賞の下読みをすること」ですね。

一同:ふふふふふ(笑)。

C:作中にお柴さんと矢Gさんが出てきてるよ(笑)。こういう楽屋オチはどうなんだろうね。しかも語り手である作者自身の存在感が最も作中で大きい!

Nori:語り手が全てを説明しちゃいますからね。途中から、それは作者というよりは登場人物の一人であった、という種明かしはあるんですけど。

C:著者が“書きたいように書いた”って印象だよね……。作者の視点が前面に出て物語を展開するのは、エンターテインメントには向かないと思う。こういう風にメタ的な語り部として作者が前面にでるのは考え物。作者を知っている人は楽しめるけど、そうじゃない人はついていけない。で作者を知らない人のほうが圧倒的に多いんだから。本来のエンタメは、作者自身の存在を消して読者をもてなすってことだからね。あ、ジャスコっていう犬が出てきてイーオンと鳴くっていうのも、これ笑えるのかな〜。

も:賞はどうしますか?

C:Stonesで。お柴さんでも矢Gさんでもなく、Noriさんが担当したほうがいいだろうね。

も:ではそれで。次、今回一番ペンネームが不思議なあみるニウムさんの『ハルチ』いきましょうか。

慎GO:主人公の周りに生徒会役員が4人現れて、その生徒会役員の4人は悪霊を倒す討伐隊なんです。その悪霊のターゲットが主人公になって、生徒会役員が主人公の周りに現れる「悪霊」を倒していきます。「ハルチ」という異空間みたいなところにスリップして戦うんですね。生徒会のメンバーは萌えの要素が入った、それなりにキャラクターが立ったメンバーでなかなか上手いです。最後、叙述トリックのどんでん返しもあります。

C:トリック自体はよくある話だよね。でも、最後にひっくり返してやろうという努力があるのは嬉しいですね。

も:ほかに今回私が読んだので生徒会モノの投稿作が2本あったんですが流行りなんですかね。

C:書きやすいんじゃないかなぁ。

矢G:最近の投稿作での生徒会モノの傾向として感じるんですけど、みんな生徒会に対する期待が大きいですよね! 「生徒会が学園を世直しする!」的な。

C:学園モノやってもいいけど、工夫が必要。ましてそういう作品が多いんだから、他と差別化しないとね。そういえば、最近、小説にヤンキーが出てこないな。暴走族とか。なんかホンワカした人がちかごろ多くない?

N崎:小説書く人とヤンキーは相性が悪いんですって!

一同:ははは(笑)。

C:これはStonesかな。慎GOさん、連絡とってペンネームもこれでいいのか聞いてみて。

も:では最後。Powers候補に残ってるのが円山まどかさんの『自殺者の森』。これは12月の頭にやった『BOX-AiR』の新人賞の最終選考で皆1話と2話は読んでますね。夢の中で謎の少女に「明日あなたは自殺しますよ」といわれるも主人公に自殺する気はまったくない。でもいざ翌日になってみると生死に直面する展開に追い込まれていくというオムニバス仕立ての話でしたが、そのときは「自殺というテーマがアニメには難しい」というスターチャイルド側の意見もあり受賞を見送りました。が、小説としては面白いという声もあったのであのあとPowersの方に応募してみませんかと連絡したら長編用に構成し大幅に加筆して送ってきたという経緯の作品ですね。
 こういう生死判定モノだと、例えば『地獄少女』や『スカイハイ』のように「番人」の立場にある人間が主人公に「生死」の選択をさせるようなパターンか、ドラマだと『世にも奇妙な物語』のタモリさんのような完全な傍観者としての語り手になりがちかなと思うんですけど、『自殺者の森』の少女はそういった存在ではなく少女自身の生い立ちの謎をうまく全体の縦軸にして物語を機能させたなぁと思いました。Powersでいいんじゃないかと思いますがどうでしょう?

C:「自殺しますよ」と言われる主人公たちの物語と、謎の少女の物語をうまく融合させましたよね。「自殺」というテーマを扱っているけれど、内面に閉じていかないところもポイントが高い。これはGO! でしょう。

一同:おめでとうございます!(拍手)

C:さて今回でCは退場することになります。デビューされた方、本当に出会えてよかったです。これからもガンガン書いてみんなをびっくりさせてください。これからデビューしようという方々、僕たち、編集者なんかの意見を吹き飛ばすような作品をお願いします。この座談会にしても編集者の経験から言っているに過ぎません。何度でも言いますが、求めるのは、僕らが読んだこともないような途方もない作品です。どうか打ちのめしてください。

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